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飛びたいペンギンが日々を語る短気集中ブログ。全36日分。楽しんでってください。
by penpen-kyoudai
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34日目

昨日は結局
いくら待ってもニンゲンは戻ってこなくて
俺達は
岩場の影に隠れたまま一夜を明かし朝を迎え
そしてまた午後になった。
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ウェッデルちゃん、疲れちゃったんだな。
なんか全然元気なくなっちゃったもんな。

俺はウェッデルちゃんに
「大丈夫?なんか元気ないみたいだけど…」
と声をかけた。

ウェッデルちゃんは言った。
「大丈夫。
元気がないのは
疲れたせいじゃないの。
あのね、ペンゾー君。
私、一晩考えて、わからなくなってきちゃったの」

ウェッデルちゃんが
話を続けようとしたその時
聞き慣れない足音が響いてきた。

なんだ?
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俺は頭の中が真っ白になった。

でもとなりのウェッデルちゃんを見たら
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どどどどーしたのっ?ウェッデルちゃん!
早くニンゲンに声かけないと
船が出ちゃうよっ?
(出ちゃっても俺はいいけど!!)

ウェッデルちゃんは
震える小さな声で言った。

「ああ、どうしたらいいのかしら…
私、本当にわからなくなっちゃったの。
この船に
乗った方がいいのかどうか…

この船でイイトコ島に帰れるんなら
それはすっごく嬉しいんだけど…
でも、それって
もう二度とペンゾー君に会えなくなるってことよね?」
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俺はびっくりした。
こんな大事な時に
ウェッデルちゃんが俺のこと考えて
寂しがってくれてるなんて!!


俺は
ウェッデルちゃんの手をつかんで
この海岸から走り去ろうかと思ったよ。

でもそんなことしていいのか?
ウェッデルちゃんは後悔しないのか?
俺は後悔しないのか?
ウェッデルちゃんの夢を
ここで終わらせちゃって
本当にいいのか?


ニンゲンはもう、船出の準備を始めていた。
もう時間がない!

俺は一瞬で心を決めた。

ウェッデルちゃんを
見送ろうって。

だって
ウェッデルちゃんの夢に通じる道が
いま目の前にひらけてるって時に
俺がそれを壊すなんて!
そんなこと出来るわけないじゃないか!!

俺にできることは
ウェッデルちゃんの、このめでたい出発を
「おめでとう」ってお祝いしながら
笑顔で見送るってあげることだけなんだ!


俺は夢中でウェッデルちゃんに叫んだ。
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「俺、絶対すぐ飛べるようになるから!
そしたら毎日イイトコ島に遊びに行くから!
だから、これでお別れなんかじゃないよ!
早くニンゲンに声をかけなよウェッデルちゃん!
ほら、もう船が出ちゃうよ!」

ウェッデルちゃんは
涙をいっぱい浮かべて俺の顔を見つめた。
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そしてすぐに
ニンゲンに向かって
一目散に走っていった。

俺は岩場に隠れながら
ウェッデルちゃんが必死になってニンゲンに
「連れってって」と頼んでいる姿を
見つめていた。

もちろんニンゲンには
ウェッデルちゃんの言葉は通じてないんだけど
気持ちが通じたのか
ニンゲン達は
ウェッデルちゃんをすんなり船に乗せてあげて
船から落ちないように網をかぶせてあげてから
すぐに出発した。

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ウェッデルちゃんは
ありがとう、って
何度も何度も叫んだ。

俺もいっぱい叫んだ。
「おめでとう」とか「頑張れよ」とか
「すぐ会いに行くよ」とか。
一生懸命、笑顔で叫んだ。

でも俺、ほんとはわかってるんだ。

たとえ俺が飛べるようになっても
イイトコ島なんて遠すぎて
行けやしないってこと。

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あっというまに
船は見えなくなった。

笑顔で見送ることができたと思ってたのに
気が付いたら俺の顔は
涙でぐしゃぐしゃになっていた。

きっとすっごい顔になっちゃってるよ。
ウェッデルちゃん、見ちゃったかな。

でも見ちゃったかどうかなんて
もう聞けないんだ。
もう話もできないんだ。
もう一緒に遊ぶことも
一緒にお魚を食べることも
あの笑顔を見ることも
なんにもできないんだ。



俺は
いっぱい泣いた。
おかしくなっちゃったかと思うほど
いっぱい涙が出て
止まんなかった。

ウェッデルちゃんが船に乗れたことを
喜んであげなきゃいけないのに
そんな気持ちには
全然なれなかった。


ごめんな、ウェッデルちゃん。

ほんとにごめんな。
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by penpen-kyoudai | 2005-10-05 00:50 | 30日目〜
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